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福山駅からほど近くの大黒町。ある一軒のお宅から雅な鼓の音が響いてくる。ここは、ギャラリーくわみつのオーナーのご自宅。玄関を入った渡り廊下の向こうには、築半世紀になるという由緒正しい立派な和室が広がる。ここで月に1度、神戸から先生をお迎えして『福山
鼓の会』のお稽古が行われている。小鼓といえば、能の楽器の中でも人気は高い。「ポン」という身のひきしまる音は聴いていて気持ちがいい。一度自分で打ってみたいと思う人も少なくないのでは?
この会の生徒さんである上田裕子さんは、スラッとした長身、メイクもお上手で、いかにも現代のお嬢様という雰囲気。それなのにもう3年も小鼓を習っているとお聞きしてビックリ。いったい何が、上田さんと小鼓を結び付けたのだろう?
2000年に広島県で、文化の国体とも言われる「国民文化祭」というイベントがありまして、そのときにいただいたチラシにこちらのことが載っていたんです。早速見学に行って、そのときに、ただの紐だと気にも留めていなかった鼓の胴と革を結ぶ紐のことを先生が「調べ(調べ緒ともいう)」と言われたんです。その「調べ」という言葉にすごく感動して、それでお稽古を始めることにしたんです。
なんだかインスピレーションに導かれた小鼓との出会いだ。それから丸3年。ここまで続いている理由というか、小鼓の魅力は?
小鼓が出す音は、「ポ」「プ」「チ」「タ」というたった4つなんです。打ち方ひとつでその音を出し、またその音の組み合わせで実にさまざまな世界が表現できるところが楽しいし、魅力です。習い始めて3年になりますが、まだまだ目新しいことばかり。奥の深〜い楽器なんです。
ここで、上田さんのお稽古の番になった。小鼓は、一人ずつ、あるいは同じ作品を練習する複数人が一緒に、先生と対座し稽古をつけてもらう。先生が謡を謡われることもあるが、こちらではなんと、能楽・喜多流シテ方の大島衣恵さんが謡ってくださるという何とも贅沢なお稽古である。
こんな、どこか壊れたら福山には直せる人がいないというほどの由緒正しい立派なお部屋で〜それにまたお庭も素晴らしいんです〜大島さんの謡を聴きながらお稽古ができるなんてなかなかないですよね。非日常的なこういう豊かな時間を過ごせるのも魅力ですね。
お稽古中の上田さんの表情は真剣そのもの。「ハー」「ヨー」という独特の掛け声が響き、背筋が伸びた後姿は凛として何とも美しい。
上田さんは今年のお正月、鞆町の沼名前神社で、豊臣秀吉が作らせたという移動式能舞台で行われた「新春能楽祭」で脇鼓をつとめた。
もう、ただただ「無」の世界です。3人で合わせるので間違えたらわかりますし、とにかく真剣勝負でした。演奏した『翁』は「能にあって能にあらず」と言われていて、宗教的な神に捧げるようなものなんです。小鼓を打っているのではなく打たせてもらっているという謙虚な心で無心につとめました。でもそういう貴重な経験ができるのも小鼓のおかげです。
では、小鼓をやっていてツライことは?
お稽古の次の日は手の指がはれるってことくらいでしょうか。もちろん、お稽古や練習は厳しいですが、仕事以外の場で自分に厳しくできること、一生懸命努力できることがあるというのは幸せだと思っています。
素晴らしい心がけだ。小鼓以外で何か習っているものは?
茶道です。それから月に一度広島までイタリア料理を習いに行っています。以前はゴスペルもやってました。
ずいぶんアクティブ。
今は、楽しい40代に向けて積極的に動くときだと思っています。とにかくいろいろなことを経験し吸収して素敵な40代を迎えたいと思っています。
最後に、『福山 鼓の会』のPRをどうぞ。
楽しい会です。お稽古に来ている方も皆さん個性的ですし…。ぜひ一度、見学にいらして鼓を打ってみてください。きっとはまりますよ。
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