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<BBS> <Editor's Diary>
last updated : 2004/11/08
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オノ君
【オノ君profile】
パリ9区在住。
20世紀フランス
文学を研究中。

vol.4 都会のオアシス

「空が哭いてる 煤け汚されて」。

昼下がりのメトロに揺られていると、ふとそんな歌詞が頭に浮かんだ。日本マニアの友達の家で飲み明かした夜、彼がなにげなくかけた『東京砂漠』の一節。そういえば、フランスでは、考えに集中しているのであれ、居眠りしているのであれ、電車の中で目を閉じている人をあまり見かけない。連れのいない乗客は見知らぬ他人と視線を合わせることもなく、新聞やペーパーバックを読むのでなければ、ただじっと虚空を見つめている。10月最後の土曜日、冬時間に変わって日が暮れるのが早くなってから、急に気温が下がったせいもあり、街はすっかり冬らしくなった。冬物のウールのコートを着こんだ人も多く目につく。

頭にすっかりこびりついたメロディーに乗せるべき歌詞を思い出そうとするうち、先日メトロの駅に置いてあるフリーペーパーで読んだ記事のことが思い浮かんだ。話題になっていたのは、最近いくつかの駅(レオミュール・セバストポール、バスティーユ、プラス・ディタリー)に設置されたミネラル・ウォーターの自動販売機のこと。清涼飲料水、スナック、新聞などの販売機はよく見かけるけれど、新しく設置されたものは18種類の水から好きなものを選べるちょっとした癒しの場所らしい。コレット(セレクトショップ)の地下にある「ウォーター・バー」に通じるコンセプトのようだ。

待ち合わせの時間まで余裕があったので、途中下車してその販売機を見てみることにした。ホームにあると思っていたのでなかなか見つからなかったけれど、それは改札の外にあった。なるほど、「水のバー」(BAR A EAUX)と書いてある。ただ、機械自体はふつうの販売機と変わらない。いろいろな種類の水が並んでいるものの、どれもスーパーなどでよく見かける銘柄。スイスの駅にはちょっとしたコンビニのような品揃えの販売機が昔からあるし、日本にもいろいろ変わった販売機がある。正直、拍子抜けという感じがする。

「水のバー」の隣にはコーヒーの販売機があった。フランスの大学や図書館などにあるこの手の機械はお金を入れてボタンを押すと、中で豆を挽く音が聞こえる。つまり、挽きたて、入れたてのエスプレッソが飲めるのだけれど、カプッチーノを選ぶとこれに泡立つミルクもついてくる。こういう機械は日本にももっとあっていいと思う。

そんなことを考えながら自動販売機を写真におさめ、改札を抜けてから、水を買い忘れたことに気づいた。

 

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