 |
 |
コーヘー |
 |
 |
2004年9月13日 |
 |
 |
ヴィー・プラス編集部 |
 |
 |
待ち合わせ |
 |
友人を迎えに行く。古くからの友人ではなく、これから友人になるかもしれない人達を。約束の場所までの道すがら、彼らは本当に来てくれているだろうか、来てくれていたらどんな顔をして言葉を掛けようか、いや、万一来ていなかったら・・・そういうことを漠然と考えて歩いていた。場所はパリ市庁舎の前。2ヶ月ほど前、ここには大きな野外モニターが設置され、郊外から若者たちが続々と押し寄せてサッカー・ヨーロッパカップ(EURO2004)のフランスの試合に熱狂した。2週間前はパリ解放六十周年のセレモニーが行われ、物々しく護衛が広場を取り囲むなか、シラク大統領がいつもの身振りで演説を行った。こじんまりと小さなブティックやカフェが建ち並ぶマレ地区の入り口にあって、この場所は開けていて人が集うようになっている。郊外の若者も大統領すらも。ここを待ち合わせの場所にすると必ず相手は現れる気がする。たとえいなくても、こちら側にいなければきっと北側の方にいるのだろう、いや、他の待ち合わせの人達の中で見落としているのかもしれないなどと言いながら、うろちょろと辺りを歩き回ることができる。僕は人と待ち合わせをしています、人を探しているんですという素振りで堂々ときょろきょろできるのだ。もし待ち合わせ場所が小さくてお洒落なカフェで、まだ親しくもない相手が来ていない場合の事を考えると・・・。
家を出て見慣れた通りを歩く。いつものように穏やかだがいきいきと人が流れており、安心してあの広場を目指すことにする。三分もすると、すれ違う人たちの表情が曇りだし、穏やかだった街全体の歩調が乱れはじめ、小走りの人や声をあげる人の姿が目にとびこんできた。何かおかしい。もしかしたら彼らは来ていないのではという不安がよぎり、なぜ来られないのかという理由を何パターンも頭の中でシミュレートし始める。地下鉄がどこかで止まっているのかもしれない。近くの通りでデモが行われていて迂回しているのかも。今日はストライキの日だったか。いや携帯の番号を向こうは知ってるのだから、もしそうなら連絡があるはずだ。もしかしたら時間を間違えたのか。それとも・・・などなど。
穏やかな流れを乱したのが大粒の雨だということにようやく気づいたのは、ある程度濡れてしまってからのことだった。人が傘を持つのが稀なほど天気の変わりやすいパリで、雨を気にしないことに慣らされていた僕は、街の変調が何によってなのか気づかなかったのだ。安心して小走りになり、市庁舎の向かいにあるデパート前で雨宿りをすることにした。約束の広場を目前にして、パリでは経験したことの無い量の雨と風が突如として吹き荒れ、蜂の子を散らすようにあちこちに走りだす約束待ちの人々を懸命に注視しながら、屋根の下なのにびしょ濡れになった僕が彼らを見つけたのはそれから四十分も後のことだった。
(写真:パリ解放六十周年記念のときの市庁舎<上>と大雨に降られたときの市庁舎前<下>)
【おしらせ】
次回からコーナーリニューアルの予定です。僕だけでなく夏季にピンチヒッターをやってもらったオノ君や、時にはそれ以外のパリ在住の日本人を交えて、さまざまな視点からパリという場が僕たちに喚起するものを書いていくことにしました。ガラっと変わるかもしれませんが、引き続きよろしくお願いします。
※『コーヘーのパリメール』は、10月より新コーナーとしてスタートいたします。しばらくお待ちください。(編集部) |
|
|
|
|